忍者ブログ
こだわりの映像作品(DVD、劇場映画、TV等)についての感想や日常雑記です。 テレグラム(時事、日常雑記、たまに映画エンタメ) https://t.me/kuronekotsuushin チャット版 https://t.me/+dYbb-75J8hMxNGU1 ネットショップ https://suzuri.jp/TIMES49662540


奇妙な道―ストレンジ・ハイウェイズ〈1〉 (扶桑社ミステリー) [文庫]
ディーン クーンツ (著), Dean Koontz (原著), 田中 一江 (翻訳)

文庫: 347ページ
出版社: 扶桑社 (1999/05)
発売日: 1999/05

幻想恐怖小説作家D・クーンツの『奇妙な道』の後半に掲載の怪奇短編です。

ハロウィーンを控えた今シーズンにぴったりの恐怖小説だと思います。
表題作は、リメイクされたストーリーのせいか、あまり評判はよくないですが...



ストーリー

活発な兄にいつもいじめられている、議員夫妻の次男トミーはハロウィーンの市で自作のかぼちゃを売っている、老かぼちゃ彫刻家に出逢う。
作者同様、その形相の恐ろしさに買うことを止めるよう兄に頼むが、兄は平然と手に入れる。その夜、トミーの家で恐怖の出来事が起きる。



大抵の読者がそうでしょうが、この作品、頭の中で短編映画にして楽しみました。内容は『トワイライトゾーン』みたいですが。

市の内部は、棚を並べているだけの、にわか造りの構造なのでしょうか。
彫刻家の周りだけ怪しく陽の翳る様子が、文中表現から目の当たりに感じられました。
兄が選んだのは、ほかで売られている通常のジャック・オ・ランタンにはない、真に鬼気迫る表情なのでしょうね。
腫瘍のごとく変形しとがった頭に長い「牙」を刻む技術、フィクションとはいえすごい職人です。


愁眉は、トミーの前に現れる不気味に変身を遂げたランタンでしょう。
帰りに残りの腕を口に詰め込む場面、総毛立つ恐ろしさと同時に、兄への恨みを晴らした爽快さも含んでいるシーンでした。
気弱だが正直なトミーが将来、かぼちゃ男と再会しないように心から願うばかりです。




ブログ村、人気ブログランキング、blogramランキングに参加しています。
よろしければ一日一回のクリックをお願いしますm(__)m
にほんブログ村 映画ブログへ  人気ブログランキングへ  blogram投票  ボタン
ありがとうございます。
映画でハロウィンといえば、やはりこちらですね。
ハロウィン
TVで写っていたパレードでは、仮装のブギーマンも見逃したのか、なかなか見かけなかったです。かぼちゃ、悪魔、魔女など伝統的な仮装の他が普通のアニメキャラばかりでは、ちょっと寂しい。









PR


ゾエトロープ blanc (BOOK PLUS) [単行本]
フランシス・フォード コッポラ (著), アドリエンヌ ブロデュール (編集), サマンサ シュニー (編集), Francis Ford Coppola (原著), 小原 亜美 (翻訳)

出版社: 角川書店 (2003/12)
発売日: 2003/12

映画監督フランシス・フォード・コッポラの米文芸誌「ゾエトロープ・オールストーリー」の邦訳短編集の第4弾。

この【blanc】において、第1段の【biz】よりも短いものの、監督による序文が掲載されているのが何よりも嬉しいです。
またその中で短編の重要性を、監督から作家に伝えていることも。

また本作と同様の質の高い文芸誌やアンソロジーが国内外で数多く出版されるように願っています。


これまでの短編集のように、印象に残った作品を幾つか挙げます。
読書の上での参考になれば、幸いです。

○オガララ Ogallala/リック・バス Rick Bass 作

短編より少し長めの作品。
両親と、その手塩にかけた畜牛と牧草地を、勉学のために離れた青年。
現在はオレゴンで製材組合の業務に就いている。
青年に代わり不法滞在の少年が、青年の老いた父親を支えて牧畜を引き継いで行く。
彼らが抱える牧場への複雑な想いと、彼方へ去りゆく貴重なオガララ帯水層の盛衰が、手元まで伝わるような小説。

日本の一般的な牧畜から想像される、広大な牧草地で牛がのんびりと草を食むイメージとはかけ離れた、米国ならではの様々な苦労をしのばせる個所がありました。


○'O Λoγos('O Logos)/T.E.ホルト

奇妙な痣のような印をつけた少女が病院に運ばれてきた
母親いわく、少女は新聞で遊んでいたという。
少女は三日後にその身体に綴られた言葉を発すると、死亡した。
その症状は次第に周囲に拡張されてゆく。
言葉が触媒となって病気を誘発する、たとえようのない恐怖を表した作品。

何度も読み込まないと理解できない話でした。
聖書の創世記にある、『はじめに言葉ありき』を連想させます。
本当にこのような病気が現実になったら、防ぎようがないですね。


○垣根の穴居人 The Cavemen in the Hedges/ステイシー・リヒター Stacey Richter

奇想天外な物語なのに、何度も読める作品でした。
突然現れた穴居人は、ネアンデルタール人に近似のルックス。しかもバービー人形や、可愛いプラスティック製品大好き。ここがツボに入りました。
若い頃パンクロッカーであった、30代のカップルが穴居人騒動に巻き込まれます。
穴居人のお陰で、主人公の彼は彼女の素晴らしさに気付くが、すでに遅し。
本作は、SFながらストーリーのわかりやすさで、【blanc】の中でも、最も集客が望める映画になりやすい作品でしょう。



ブログ村、人気ブログランキング、blogramランキングに参加しています。
よろしければ一日一回のクリックをお願いしますm(__)m
にほんブログ村 映画ブログへ  人気ブログランキングへ  blogram投票<br />ボタン
ありがとうございます。
ゾエトロープ短編集は、並べてみると、最も【biz】が構成や内容もいいですね。
ネット評だと、最近の二冊【noir】と【blanc】が人気あるようです。
コッポラ監督程の企画力でないと、おそらくこのレベルまで出せなかったでしょう。
邦人監督でもひとつ、洒落た作品群を望みたいものです。


裏庭 (新潮文庫) [文庫]
梨木 香歩 (著)

文庫: 412ページ
出版社: 新潮社 (2000/12)
発売日: 2000/12

ストーリー(Amazonより)

昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた―教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。


『りかさん』に続き、ご紹介する、
梨木香歩さんの作品。

西洋の民話と日本の昔話をベースにしています。
子供向けのようでいて、大人の方が入っていけそうな(それでも根気がいる)重く、深い内容なので、何度も読み込まないと、理解しにくい所があります。
主人公である照美や家族の現実と、バーンズ屋敷の大鏡から入る裏庭の世界を、文体を変えて綴っているのが特徴的です。

頭に片割れの珠をしまっているというテナシ、他の物語にも類似の人物をみかけたことがあります。
ちょっと怖い話だったような..
テナシはテナシのままではなく(そうであればいたたまれないですが)、後半に銀の手になるのが、救いです。映画にするなら、ここは映像化したい場面ですね。

『指輪物語』も探求、克服する物語ですが、ゲームのように純粋に異世界を楽しめる部分がありました。『裏庭』は、なかなかのんびりとぶらぶら歩きができない世界で、常に困難を克服する努力が必要です。それだけに、物語の終盤は、照美をはじめ家族など主な登場人物はそれまでの弱く、凡庸な姿から心身がかなり変化しているなと思います。

『裏庭』読了後、むかし親戚の叔母さんの家があった、横浜の山手周辺を思い出しました。(場所が曖昧なので、済みません)
外国人の邸宅が数軒周囲にあって、明るい髪色の子供が遊んでました。
本作のバーンズ屋敷同様に、この情景、なつかしいです。


まだ未読の方に、本書に似ていると(個人的に)思う小説、ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』もお薦めです。
本書よりもっと分かりづらく重たい話ですが、一度読んでみて欲しいです。




ブログ村、人気ブログランキング、blogramランキングに参加しています。
よろしければ一日一回のクリックをお願いしますm(__)m
にほんブログ村 映画ブログへ  人気ブログランキングへ  blogram投票  ボタン
ありがとうございます。梨木さんの作品は、西洋風の児童文学がよく知られていますが、私は『りかさん』『家守綺譚』等の、日常や和を尊ぶ作品に惹かれます。自分自身は不思議探求や冒険が譚好きだと思っていますが、実は普段とあまり変わらない日常か、あるいは少しだけ異なる世界が好きなのでしょうか。



ブックマーク登録のヒデヨシさんが、先ごろ『家守綺譚』のレビューを書かれていたので、その著者である作家梨木香歩さんの著作を再読しています。

書棚には、梨木作品が何冊か並んでいたのに、いつのまにか『りかさん』のみが残っていました。『家守綺譚』と『からくりからくさ』は紛失してしまったようです。(TV脇の小棚にあった『裏庭』はまた別な機会に。)

そこで、二作品はまた古書でも買い求めることにして、まずは『りかさん』から。

新刊時の新聞広告では、すっかりおどろなホラーと勘違いをして、実際に購入して読んでみたら『りかさん』と呼ばれる日本人形と主人公のようこが織り成す、何とも昔懐かしい体裁のお話でした。(雛祭りの人形や青い目の人形にまつわるストーリーには、怖い部分もありますが)

おばあさんに贈られた人形が流行りのリカちゃん人形でなく、黒髪の市松人形なのでがっかりする主人公のようこ。

同梱の説明書通りに世話をしながら、次第に不思議なりかさんに馴染んでいく。

りかさんによって、自宅にある雛人形の言葉がわかるようになり、登美子ちゃんの家に飾られている人形達の歴史や哀しみを理解してゆくようこ。寡黙な汐汲の台座に隠されていた西洋人形の経緯は、真に迫っていて心痛む話でした。

この物語から思い出すのは、友人から借りて読んだ山岸涼子の漫画です。
こちらはもっと陰に篭って、怖い話ですね。


この本で私が好きな場面は、物語のラストにかけて主人公がおばあさんと(りかさんも)一緒に、切られて枝だけ残った桜の老木を染めるところです。

植物染めのアクは悲しいと語る、おばあさん。
だから澄んだ差別をして、ものを見極めないといけない。
どんな差や違いでもかわいいと思うと、アクは悲しくなくなる。

仕上がった縮緬(ちりめん)は、桜なのに、淡紅梅の色合い。

ここは、本編でも特に読んで頂きたい個所です。

たしか、続編の『からくりからくさ』でも染色をする個所があると思いますが、自分でも不器用ながら草木染めをしたくなってしまいました。併録の『ミケルの庭』は、出来れば『からくり〜』と一緒に読むことをお薦めします。




りかさん (新潮文庫) (文庫)
梨木 香歩 (著)



ブログ村、人気ブログランキング、blogramランキングに参加しています。
よろしければ一日一回のクリックをお願いしますm(__)m
にほんブログ村 映画ブログへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
ありがとうございます。映画にもなった『西の魔女が死んだ』は未読です。著書によってかなり雰囲気が異なり、まだ全作を読破してみたいとは思わないのですが、梨木さんは女性作家の中でもすぅーっと肌に馴染む自然性を持っている方だという気がします。



世界怪談名作集〈上〉 (河出文庫) (文庫)
岡本 綺堂 (翻訳)

SNS友人の自宅図書館の膨大な蔵書からお借りした数冊の本のうち、昭和62年の旧版でしたが、この上下巻が最も満足できました。

岡本綺堂は『半七捕物帳』をはじめとする時代小説を主な著作とする作家なので、いわゆる翻訳家の手になる文章よりちょっと文体が独特なのですが(Amazonレビューにもあるように)、それが彼らしい文章の持ち味になっています。


それでは印象に残った上巻の三作品を。

貸家/リットン

化け物屋敷の恐怖。
正体は、化学機械による仕掛け?と呪いか。
それにしても中盤の怖さは本物。
肖像画の男の正体も、もっと知りたい。


クラリモンド/ゴーチェ

死せる美女の怪異譚。
同種奇談は数多いが、若き僧を魅了する女性の稀なる容姿。
僧侶は師の助言により救われたが、果たしてそれで幸せだったのか。


信号手/ディケンズ

以前ブログでも紹介した『イギリス幻想文学必携』に掲載の物語。
この本で偶然読めて幸いでした。
孤独な信号手が発した言葉と動作、わたしと機関手の言葉と動作の奇妙な暗合。
上下巻中、これが最も怖いと思う話。




世界怪談名作集〈下〉 (河出文庫) (文庫)
岡本 綺堂 (翻訳)


同様に下巻の三作品も。

北極星号の船長/ドイル

氷に閉ざされた北極の海で立往生する船。
幻影を追いかけて行った船長の死。
後に、主人公の父による附記に真相が。

上床(アッパーパース)/クラウフォード

こちらも船の中の事件が題材。
えたいのしれない物は、海中に存在するのか。
読んだ後、二段以上の寝台できっと眠れないだろう。


ラザルス/アンドレーフ

聖書のラザロから題材を取っている物語。
墓から甦った、死者の表現が緻密で素晴らしい。
ラザルスの恐怖に勝った皇帝は、彼を殺せなかった。


下巻は何故か、海における怪談が二編入ってます。
若い頃船員であった亡父が存命中に読んで興味を惹かれ、その内容について一緒に話し合った物語(夜の声/W.ホジソン)を思い出しました。





ブログ村、人気ブログランキング、blogramランキングに参加しています。
よろしければ一日一回のクリックをお願いしますm(__)m
にほんブログ村 映画ブログへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
ありがとうございます。他にも同時に借りたのになかなか読み進めない本があり、この種のタイプは苦手と確信しました(おもにコメディSF)。色んな作品を読んでみたものの、私にとっては、やはりゴシック小説や怪談が一番です。





プロフィール
HN:
Kuroneko Tsuusin
性別:
非公開
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
twitter
ブログ村ブログパーツ
忍者アクセス解析
SUZURI
能楽ダンディ
ステッカー
Copyright ©  -- くろねこ通信の映画雑記 --  All Rights Reserved
Designed by CriCri Material by 妙の宴
powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]