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ゲイルズバーグの春を愛す ハヤカワ文庫 FT 26 [文庫]
ジャック・フィニイ (著), 福島 正実 (翻訳)

全部で10の短編が収録されているジャック・フィニイのファンタジー集です。イリノイ州ゲイルズバーグで始まる、いずれもアメリカの平凡な街にまつわる不思議な物語。

どの短編も読み応え十分でしたが、今回は、ラストの「愛の手紙」について書きたいと思います。他編の感想は、本をテーマにした回にまた。


この本を開いて最初に読んだ短編が、この最後に収められている「愛の手紙」でした。
これは、日常使う眼鏡のごとく今を生きるには欠かせない、或る大切な人に捧げたい物語です。(ちなみにJ・フィニイも、彼も眼鏡愛用者です)

読むたびに、何故か涙がとまらない。
懐古趣味といえば、それまでですが。


主人公は、NYブルックリン在住の青年。
結婚を予定している女性との付き合いはあるが、どうも本気になれない。
あるとき、近所の古い邸宅にあった古風な机を古道具屋で購入する。
彼は机に付いている小仕切りや抽斗を探るうちに、隠し抽斗に仕舞われていた手紙を発見する。

NYの若き青年と古き佳き時代の婦人が古い郵便局と古風な机を通じて、時を超えて手紙を交換する、懐かしくファンタジィに満ちた物語です。


Amazonのレビュアーの方(湯島杢兵衛さん)がご指摘になっていた、英語の原作の一部を読んでみました。
http://homepage.mac.com/cssfan/jackfinney/sep590801016.htm

ヘレンの二度目の手紙にあった、(結びの挨拶であるmost sincerelyの前の)最後の言葉。
I remain,
これは、彼女の墓碑銘と照らし合わせてみるとよく理解できます。
結婚予定の人とは一緒にならず、結局独身を貫いたのですね。

訳者の故福島正実氏は、これをあえて訳さなかったのではと私なりに推測します。(結びの訳語である「心から〜」に含まれているのかもしれません)物語の最後の文章にある、"雨風にうたれたふるい石碑の表面に刻まれた碑文"の名前をどうか読んでくれ、と。

J・フィニイと訳者福島氏の心が沁みる、愛の短編です。




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ありがとうございます。
本書は、念願だったBRUTUSの映画監督特集号を店頭購入する際に、何か文庫本も、と思って一緒に買った一冊です。
邦版ならではの魅力溢れる、内田善美さんの表紙画にも惹かれました。
帰宅後生涯の一冊になった本に出逢えたことに感謝しました。慌しい本選びのわずかな一時でも自分の趣味嗜好は鋭く働くのだなー、と感心した次第です。
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